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タモリ・たけし・さんま…昭和の働き方はエグすぎた!

放送作家・鈴木しげきのTVコラム

オリラジの中田敦彦さんが以前、ある番組でこんな発言をしました。

「ビッグ3いるじゃないですか? ビッグ3いるのおかしくないですか? ずっと会長が変わらずに、社長が変わらずに、ずーっと部長が入れ替わってるんですよ」

これは、“お笑いBIG3”と呼ばれるタモリさん・ビートたけしさん・明石家さんまさんがテレビ界に健在であることで、世代交代が進まない現状にふれたもので、その頃、炎上気味に話題となりました。「人の噂も七十五日」ではありませんが、もはやすっかり落ち着いた感があるので、このコラムでは正面から冷静に取り上げたい(笑)と思います。

中田さんの発言に対し、ネットのコメント欄には「言わんとしている事はわかります。しかしながら、あなた(中田さん)はトップスリーをこえられるほどの実力があるのでしょうか?」や「中田の言いたいことは凄くよくわかる。でも、中田の実力はどうなの?って話で」といった声があふれました。すっかり中田さんが標的となってしまい、他のコメントにも目を通しましたが、ビッグ3を責める声はほとんどなく、みんな、今もビッグ3が好きなことがうかがい知れました。

なぜ、ビッグ3は今もいるのか?

多くの人が言っているように「実力があるから」というのに筆者もまったく同感なのですが、もうちょっと具体的に迫ってみたいと思います。

著書「労働2.0」のイベント時に佇む中田氏。

◆無茶苦茶な働き方でケタ外れのスケール感を漂わせる3人

ビッグ3と同時期を駆け抜けてきた山田邦子さんが昭和の働き方について語っているのを聞いたことがあります。

「20代の頃は睡眠を取らずに働くことが多かったですね。例えば、1日24時間しかないのにスケジュールには30時終わりと書いてあるんです。そのため、移動中のタクシーの中で15分ほど寝たり」

これを読んでいるあなたが50代以上ならわかる部分はあるかと思います。確かに昭和の働き方はムチャクチャでした。当時、たけしさんが人気番組『オレたちひょうきん族』を「家にお化けが出た」という理由でズル休みしたことがありますが、きっと本当は超過密スケジュールで身体がしんどかったのでしょう。タモリさんも「髪を切る時間がない」と生放送で言っていたり、さんまさんも東阪を往復しながらあの露出をこなしていたり、時代の波に乗っていたと言えば聞こえはいいですが、実際は時間に追われていたんだと思います。

確かにあの頃のテレビ局といえば、土日も昼も夜も関係なく、人が働いていました。某芸能プロダクションなんて24時間365日営業を掲げていて、真夜中に電話しても本当に誰かが出ていたんです。そうやって忙しさを謳歌していた――と思っていましたが、今、振り返るとただ加速させるばかりでなんとも危なっかしい時代でした。

そのせいで山田邦子さんは仕事が少し落ち着いた40代で病気になってしまいます。こういった悲劇は芸能界に限らず、日本のあちこちで起きており、それを日本全体で正してきたという経緯があります。

そんな中、ビッグ3はあんなスケジュールを乗り越え、命を維持して今なおテレビで活躍していること自体が奇跡でしょう。結果、この3人はとんでもないスケール感をもった、コメディアンになってしまいました。

今の芸人さんがこれになれるのか?

きっと無理でしょう。ビッグ3が持つ、清濁あわせ飲んだ感じや、あらゆる経験をくぐり抜けた深み。そういったものを今のタレントさんに求めても、それはおかしな話で、今のスターは今の魅力をまとえばいいと思います。そしてなにより、あのような働き方は二度としなくていい。

冒頭のオリラジ中田さんの発言が、「ずっと会長が変わらずに、社長が変わらずに、ずーっと部長が入れ替わってるんですよ」と企業に例えて説明していますが、本当にそういった企業はあるのかもしれませんね。バブル期を生き抜いた人たちというのは本当にタフでしぶとい(笑)。その人たちを見上げて羨ましがるよりも、これはもう時代のせいだ、と割り切った方が健全なのでは。

◆ビッグ3は「運」を集中して使っている!?

運の問題があると思います。「運」なんてものを解き明かすことは将来的には可能になるのかもしれませんが、自分ではコントロールしきれないものを我々は「運」と呼んでいます。その使い方にビッグ3世代は今の芸人さんとは違う特徴があるように見えます。

さんまさんがラジオで、ある女性タレントに「おまえ、ギャンブルに勝ったんか? だったら、しばらくツイてないわ」と言っていたのを筆者は覚えています。というか、さんまさんはこういった類の発言を過去に何度もしており、たけしさんも同様で「私生活で運をつかったら、そのぶん仕事の運が逃げていく」との考えを著書で語っています。

そして、その極みのような人が萩本欽一さんです。先日、司会をする日本テレビ系『仮想大賞』が3年ぶりに復活するという報道があり、「まだまだお元気でうれしいなぁ」と筆者は思っていたところ。その欽ちゃん、自分の周りにいるスタッフにすら、最近離婚した人や身内に不幸があった人がいたら呼び寄せて大きな仕事を任せたと言います。理由は、私生活で不幸があったのだから、きっと仕事ではいいことがあると信じて、だそうです。とにかく、運を仕事に集中させているのです。

今の芸人さんは、女優やアイドル、モデルさんと結婚する人が多いですが、その時点で上の世代には「運つかってるなぁ」と見えているだろうと想像します。もちろん、世間が羨むような美人を奥さんにすることはその人のしあわせですし、なにより自由でしょう。けど、それでは芸人としての運を呼び寄せられない、と考えていたのが上の世代のようです(実際、さんまさんは人気女優の大竹しのぶさんと結婚しましたが、別れてから飛躍的におもしろさがパワーアップしてますよね。なにか関係があるのかもしれませんね)。

運の話はオカルトめいてくるのでこのへんでやめておきます。ただ、それくらいに芸能界は不安定で先が読めない世界だということでしょう。

◆次のビッグスターってどんな人なんだろう?

今の芸能界は、良い家に生まれて、ルックスに恵まれ、学歴もある。さらにいろんな経験の機会にも恵まれた人が芸能人になるようです。そんな中からはどんなスターが生まれるのか? きっとそういった存在は憧れの対象であり、同時に嫉妬の対象でしょう。ですから、一度つまずいたら転落も早い。

しかしスターというのは必ずしも憧れだけではありません。これだけ社会に格差が広がっているのですから、窮屈な世の中に風穴をあけて登場してくるヤツを多くの人は歓迎するはずです。カネはない、ルックスも特によくない、社会から落ちこぼれ気味……けど、今までにない魅力がある! こんなヤツが世の中をひっくり返していったら、世間は夢中になり、スーパースターの誕生となります。そういう人は憧れの対象というより、感情移入されて熱烈に応援される。これ、まさにビッグ3がやったことです。

けど、こればかりは時代の巡りあわせなので、それがいつ来るのか? 来ないのか? よくわかりません。スポーツ界には大谷翔平というスーパースターがいますが、もしかしたら世界とつながることで、これまでとは違うスケールのスターがエンタメ界にも誕生するのかも。すでに予兆みたいなものは感じますよね。楽しみ。

【文:鈴木 しげき】 執筆者プロフィール
放送作家として『ダウンタウンDX』『志村けんのバカ殿様』などを担当。また脚本家として映画『ブルーハーツが聴こえる』連ドラ『黒猫、ときどき花屋』などを執筆。放送作家&ライター集団『リーゼント』主宰

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