【令和の名曲が誕生!】マキタスポーツ「雨ふれば」に想う
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除され、徐々に日常が戻りつつある。私も全面の在宅勤務から、通勤と在宅勤務が半々の生活に移行している。
そんな中での梅雨入り。通勤で自宅から駅までは約1キロの道のりである。そして雨の朝。私は自宅を出て、駅まで傘をさしながら歩く。今年も梅雨がやったきたのを実感する。
通勤の雨はあまり好きではないが、ふと笑みがこぼれる。bluetoothイヤホンで聴いている曲のせいである。
そして、普通の生活、日常がようやく戻り始めたのも実感している。雨も悪くないな。そう思い駅まで歩く。
令和の名曲
「雨ふれば」をご存知だろうか。
マキタスポーツ氏が最近リリースした楽曲である。
初めに聴いた時、歌詞にほくそ笑み、曲に心をうごかされた。そして聴き終わったあとの余韻。いい感じだ。バランスが絶妙である。
5分弱の曲があっと言う間に終わる。
曲にはマキタスポーツ氏の長年の音楽研究家としての成果が発揮されているようだ。名曲のいいとこ取りの要素が素晴らしいバランスで作られている。
マキタスポーツ氏の少しマニアックな音楽番組「ザ・カセットテープミュージック」で披露されていたカノン進行、未練コード進行、クマムシ、二拍三連、などが入っているという話もあるが、その辺は私はよく分からない。だが、私の好きな高揚感がピークに達するビクトリーコードは感じられる。
そして歌詞だ。J-popのパロディだという話もあるが、最近の事情に疎いおじさんの私にはよく分からない。
特にギターソロの後がいい。それまで、見事な旋律に浸って違和感なく入って来ていた歌詞が、そこから意味を持って耳に入ってくる。普通の事をそれらしく語っている歌詞に気付く。あまりにも当たり前の歌詞に思わずほくそ笑む。
そして呟く。「当たり前やないか」
マキタスポーツワールドである。
マキタスポーツ氏のお笑い観も感じられる。人をおちょくったような当たり前の言葉が綴られている。しかしドラマチックないいとこ取り満載の曲と、この人を食ったような歌詞との対比が素晴らしい。
そして歌い上げるマキタスポーツ氏の声。曲と歌詞と声のマッチング。素晴らしいと思う。見事なメロディで歌いあげられるマキタスポーツ氏の声に隠される歌詞のボケ。歌、メロディのテンションが下がったときに、ふと笑いがこみ上げてくる。緊張と緩和なのか。
私にとっては、令和の名曲だ。これぞ令和のエンターテインメントだと思う。
そしてこの曲には、名曲によくある時代性が感じられる
コロナ禍の今だから
コロナ禍の中、この曲の前に、マキタスポーツ氏は「普通の生活」という曲をYouTube で公開している。緊急事態宣言で、日常の生活が制限される中、みんなに普通の生活に戻ったら何をやりたいかを募集して映像にその想いを反映させている。マキタスポーツ氏の歌、メロディと相まってジンとくる。普通の生活の尊さを感じさせるいい曲である。
そこからの「雨ふれば」である。日常、普通、当たり前。今その意味の貴重さが、身に染みる。
梅雨、水害の今
ここ数年は、毎年のように各地で、数十年に一度や観測史上初などの異常気象が私達の日常を脅かしている。今年も九州豪雨があり、多くの人の日常や当たり前が失われている。
この曲を聴き、雨が上がった後の晴れ間の尊さ、当たり前に感謝する。
歌詞にある、「雨がやめばそれが晴れさ」当たり前だが尊く感じる。
令和の時代性
平成から令和に年号が変わった時、私には違和感があった。令和の令が気になった。調べてみると、令には、神からお告げなどの意味や、麗しなどの美しさや調和という意味があると同時に、「命令」「条令」のような、強制の意味がある。私の懸念は最後の意味からきているのだろう。そして令和二年の緊急事態宣言。私の懸念が現実になっているように感じる。本来強制がない要請がが事実上強制力を持って人々の生活を制限している。
もしくはコロナが神からのお告げという意味を持っているのだろうか。
「雨ふれば」の曲からは、旋律の麗しさと、強制から解放された普通の日常の尊さが感じられる。私が令和の名曲と感じるのはこれが理由なのかも知れない。
この曲にはマキタスポーツ氏のロッカー、お笑い芸人、として少し新しい世の中の風刺や、体制に流されない反骨心、自由への想いなどがあふれていると感じる。
マキタスポーツ氏から「雨ふれば」のコメントがいただけた。
「意味の世界にずっととらわれているとたまに逃げ出したくなります。僕は家族を持ち、仲間がいて、仕事で取り引きがあり、信頼されて、たまに嘘をついたり、意味を操作したりしながら生きてる。なんでそんなことやったのか?みたいなことはだいたい避けて通るようにしてる。皆さんはどうですか?僕は重力って本当にあんの?とかたまに疑ってみるんですが、歯が立たないし、考えるのが面倒だからすぐに納得します。だから僕は意味と無意味の裂け目をうろちょろして、酒飲んで寝てます。こんな自分が恥ずかしいです。昨今は特にルールの緻密な社会です。解像度、ドット数、細やかで、滑らかで、シームレスで、丁寧で、心配りの行き届いた動作が求められます。サウナで、暑さを我慢した後に一瞬の緊張と解放を得るように、この曲という水風呂に入ってみてください。」
コロナ禍という緊張からの解放感、今を感じる。
5年後、10年後、アフターコロナのその梅雨の季節に、コロナ禍で聴いたこの曲を想い出すだろう。そんな予感が今からする。
ザ・カセットテープ・ミュージック
このタイミングでマキタスポーツ氏が音楽を解説している番組の生配信イベントがあるようだ。
音楽バラエティー番組「ザ・カセットテープ・ミュージック」のイベント「ザ・カセットテープ・ミュージック~みんなで飲もう、オンラインパーティ~(飲食持込可)」
https://www.twellv.co.jp/news/whatsnew/2020/42695/
この番組はマニアックな音楽番組なので、音楽の専門的解説にはついて行けてないのだが、楽しく拝見している。この番組のおかげで、スージー鈴木という人を知った。ほぼ同世代のこのおじさんも素晴らしい。
雨ふればの話題も出てくるかも知れないこのイベント。今から楽しみである。
(シエロ教授)