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こんな時だからこそ生徒にしてほしいこと :森川大地教諭

令和2年2月27日に休校要請が出され、翌28日から多くの学校が休校となった。休校という手段の是非やその目的は一旦置いておくとして、休校措置が子どもたちにもたらしたものだけを考えるなら、この全国学校休校要請が出された2月27日は「時間が子どもたちの手に戻った」瞬間だった。イベントの自粛要請も出ていたこともあり、授業だけでなく部活や塾もなくなった。アルバイトはなくならないにしても、増えることはないだろう。子どもたちは基本的に日中の時間は「暇」になったのだと思う。

進学校に勤務していることを差し引いても、最近は子どもたちから「暇だ」という言葉を聞く機会が激減したように思う。学校、塾での勉強、部活、アルバイトと「やること」「やるべきこと」が与えられ、それをこなすことが日々の生活の中心にある。さらに、スマホが登場してから膨大な量のコンテンツが提供され、可処分時間の奪い合いが起こっている。「暇つぶし」という言葉は死語になったようにさえ思う。

そんな中で、今まで子どもたちの生活の中心にあった学校が急になくなった。部活動も塾もない中で「急に」というのがポイントである。予定を入れる暇もなく、何かイベントが企画される余裕もなく(イベント自体がそもそも中止になっている)、子どもたち自身に時間が返ってきた。

僥倖だと思う。当然、スマホでゲームに時間を費やしたり、生活リズムが乱れてずっと寝ていたりする子どももたくさん出るだろう。それでも一か月の自由な時間が子どもに帰ってくるというのは、今の時代どう考えても幸運でしかない。

私がこの期間に子どもたちにぜひやってほしいと思うことは「この一か月をどう使うかを考える」という行為だ。自分にはどんなことができるのか。どんな選択肢があるのか。自分は何をしてみたいのか。そういうことをまずじっくり考えてみてほしい。

勉強だったり、遊びだったり、どこかへ行くことだったり、運動だったり。今まで時間があったらやってみたいと思っていたこと、こんな機会がないとやれないことを全部書き出してみるといい。「やりたいことリスト100」みたいなものを作ってみる。そしてリストの中から何をやるかを自分で決める。

結果として「今までの復習を全部やる」でも「気が済むまで寝てみる」ことになっても「ウイニングイレブン」をやりまくることになっても、それはそれでいいのではないか。どうせなら「気が済むまで寝てみたらどうなったか」「ウイニングイレブンを満足するまでやり続けたらどうなったか」を「やってみた報告」として書いてみてほしい。

お金と同様に時間の使い方には「投資」と「消費」があると思う。「投資」とは自分の人生のために時間を使うことであるし、「消費」とは自分の日々の生活に時間を使うことだと思う。「投資」はどちらかと言えば理性的な時間の使い方であるし、「消費」はどちらかと言えば本能的な時間の使い方であると思う。

この二つの時間の使い方はその時に何をしたかで決まるものではないと思う。「結果どうなったか」なのだ。自分の人生に意味を持つ時間であったならそれは「投資」的な時間の使い方だったということになるし、それがその時の生活の範囲で終わったなら「消費」的な時間の使い方になる。

使った時間の意味付けで投資にも消費にもなる。例えば、ゲームばかりし続けたとして将来e‐スポーツの選手になったとか、好きが高じてゲームクリエイターになったとかならその時間は投資的な時間になる。以前の同僚に、大学時代の「長期間引きこもった」経験を武器に生徒を引き付け、その経験から得られた知見で人生を語っていた教員もいる。

結局、後々の人生にどう意味づけられるかということで使った時間の価値は決まってくる。その価値を高める方法は「自分はどうこの時間を使おうか」と考えることであるし、「使った時間はどうだったのか」と振り返ってみることであると思う。「事前の期待と実際の体験との比較」、「体験後の感覚・心情とそこへ至る過程の言語化」など通して体験を経験へと抽象化してみてほしい。

前後の時間の使い方で、体験から抽出される経験の密度が変わる。その密度を濃くしておくと後々自分の人生への意味付けも可能になるのではないかと思う。さらりと流れていってしまう生活に時間を「消費」してしまってもよいが、「ああ、時間を無駄に使ったな」という反省程度なら普段の生活でも味わえる。

できることなら時間軸の長い、今後の人生に資する時間としてこの一か月を使ってもらいたい。あの1ヶ月にこんなことをやったぜという原体験を持った「コロナ世代」と呼ばれる世代が生まれてくると面白い。

(埼玉県立高校 森川大地教諭)

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