BLOG

ここに説明を入力します。
ここに説明を入力します。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 教育
  4. 「なりたい自分になってほしい」小学校教諭たくみ先生が語る教育のあり方

「なりたい自分になってほしい」小学校教諭たくみ先生が語る教育のあり方

未来の先生とは何か? どんな先生が未来の先生なのか? その定義は、はっきりとは分からない。ただ、正しいものと正しくないもの以外の 余白が認められない社会となりつつある昨今、従来の常識・非常識を疑い、子供のために教育の本質を追究する先生がいる。

立川市立小学校で教壇に立つ中村拓海先生。 生徒からは「たくみ先生」と呼ばれ、親しまれている。 穏やかに語る口調と優しい笑顔が印象的なたくみ先生の雰囲気が、 生徒に壁を感じさせず、気軽に話しかけられる空気を醸し出すのだろう。

しかし、数年前まではそうではなかったという。 教師としての威厳、カリスマ性を持つことにこだわり、教員一年目はいわゆる昔ながらの教師像を追い求めていた。なぜ「中村先生」から、「たくみ先生」に変わったのか。その変化について、たくみ先生はこう語った。

「小学校教員一年目に担任をもったクラスは、 学級に落ち着きがありませんでした。そのため、生徒たちをコントロールするために教師としての威厳を感じさせる目的で厳しく指導し、授業もかなり気合を入れて準備し、行いました。しかし、全然うまくいかなくて。生徒だけでなく先輩の先生方にも授業がおもしろくないねと言われ 苦悩する日々が続きました。

やがて、自分自身の教師としてのあり方に疑問をもつようになりました。自分がなりたかった教師は 生徒たちを力や権力で統制する教師なのかと。そうモヤモヤしながら月日が経ったある日、外部団体が 運営する教員研修プログラムへ参加できる機会があり、そこに飛び込みました。そして、一緒に参加していたある人の言葉にハッとさせられました。

『子供たちは、私たちが思っている以上にまわりの評価を気にしている。本当は チューリップなのに、大人からバラになれと言われ、必死にそうなろうとしている。』

カリスマ的な先生の影響を受け、バラになろうとしてなった生徒の未来にどんな幸せが待っているのか。この言葉を聞いて考えました。でも僕には想像できませんでした。だから、やっぱり僕が目指す教員像はカリスマ先生ではない。そう再認識したんです。

『なりたい自分になろう。』これが私の信念です。 自分はどんな人間なのか、どんなことが好きで、興味があるのか。それを理解した上で、目の前のことを頑張る。 それができたら、子供は幸せになれるんじゃないか。それを応援するのが教員という仕事で、 自分はそれがしたいんじゃないか、と思ったんです。」

今年度たくみ先生は6年生の担任を務めている。2学期を迎えたある日に、特別授業を行った。それは、宇宙開発にかかわっている民間企業の方をゲストに呼んだ授業だった。

授業内容は「フィルムロケットを飛ばそう」。使うものは、カメラのフィルムケース、水、入浴剤のみ。授業の目標は「どうやったらできるだけ遠くに飛ばせるかを考える」だ。 決まったやり方はない。つまり、正解がない。やってみて、振り返って、考えて、またやってみるを繰り返すしかない。しかし、そんな課題に子供たちは夢中になって取り組む。

「羽の形変えたほうが良くない?」などと議論しながら児童たち自身で作ったフィルムロケット。

なぜそんなに夢中になるのか。 それは、今まで子供たちが「これが正解」とされるものを押し付けられていたからではないかとたくみ先生は語る。実は、この6学年にも様々な個性をもつ子供たちがいた。しかし、自分の信念にもとづき、たくみ先生は子供たちの声に耳を傾けながら、 「なりたい自分になろう」と伝え続けた。

道徳の授業では、単に思いやりを持とうと言うのではなく、「今まで私が相手に言われて嬉しかったこと」というテーマについて、みんなで答えを共有するという取り組みを行った。1秒の言葉は人を喜ばせることもあれば、悲しませることもある。だからこそ、言葉を大切に扱ってほしいというたくみ先生の想いがこもった授業だ。

また、年間を通して日記を書くことに取り組ませた。それは、自分を内省する習慣を身につけてほしかったからだ。自分が思う自分も、相手が思う自分も、すべて自分。勉強ができない自分も、明るい性格だねと言われるのも自分。それを含めて、なりたい自分になろう、とたくみ先生は伝え続けた。

そうした日々を積み重ねた結果、あることが起きた。コロナウイルスで学校休業が決まった2月末。その翌週の月曜日に、生徒たちがサプライズの歌と、一人ひとりからメッセージが書かれた本をプレゼントしてくれたのだ。完全に予想外の出来事だったという。

児童たちがサプライズでプレゼントしてくれたメッセージ本。

卒業式は満足にできそうにない。でも、中学校に行っても目標に向かって輝いてほしいと、たくみ先生は願っている。

「そもそも私が教員になりたいと思ったのは、小学生サッカーチームのコーチをしたのがきっかけでした。最後の大会の決勝で、0-1でチームが負けていたときに 指導者としてどう子供たちに声をかけるか考えていたら、休憩タイムで子供たちが勝手に話し合いを始めたんです。よし、こうしよう!と子供たちだけで会話が終わり、プレーが始まったと思ったら、なんとそこから逆転し 2-1で勝利し優勝しました。そのときに、子供の成長が間近で見れる教員になろうと思ったんです。その原点を忘れずに、これからも教員をやっていきたいですね。」

希望をもって先生になったが、現実はうまくいかない。どうすればよいか苦悩する先生もたくさんいるだろう。しかし、先生を目指した原点はなにか、先生とはなにか、 教育とは何のためにあるのか、こうした問いに立ち返り目の前にいる子供たちのために必死になって考え行動し続ける先生がいる。そのような先生たちが、子供たちの未来に光を照らすのだ。

(UNPORTALISM 編集部)

関連記事