高校教師は憂鬱か?今だから思える「教える」こと:井波祐二教諭
新型コロナウィルス感染症の予防対策で、多くの学校が臨時休業となった。生徒が学校という場で時間を費やす生活構造が一変し、さまざまなところで変化と混乱が起きている。たしかに、公園には平日から子どもの姿がたくさん見られるようになり、今日も中学生くらいの男子が土日にしか利用しない少年野球用の公園で野球をやっている。
経済にも様々な影響が生まれ、楽観視できない状況であることを踏まえた上で、教員として思ったことがある。それは、「こんなときだからこそ生徒たちには徹底的に自分について向き合ってほしい」ということだ。
はじめて自分に向き合う時間を学生たちは得ているのかもしれないから
日々やらなければならないことが積み重なる環境から解き放たれた今、日々の過ごし方をどうするか、自分で考えなければならない。やることを自分で決めるということは、自分自身の興味や関心に気づくということ。つまり、自分を知るというプロセスが不可欠になる。それは、この正解のない混沌の社会を生き抜く上で実は最も大切な機会だと考える。特に日本の中学・高校生は日々勉強に部活に忙しい。家に帰ってもSNSでのコミュニケーションが続く。立ち止まって考える時間がなかなかとれない。そんな中だからこそ、今はとても貴重な時間だ。
また、自分を知るためにはじっくり内省するとともに、小さな行動をしてみることも大切だ。知らなかったことを知りに行き、生で見たことなかったものを見に行く。興味がなかったことにあえて触れることも良い。そんなふうにして、小さな経験値をたくさん積んでいくことを生徒たちにおすすめしたい。
そして、私自身もこの機会を学びと気づきを得る場にしたい。いままで当たり前にやっていたことを疑い、本来やるべきこととやらなくてよいこと、オンライン・オフラインでできることとできないことなどを見直し、新しい形にチャレンジしてみる。そうした小さな行動を積み重ね、4月から出会う生徒たちに自らの学びを共有するところからスタートしたい。
(都立高校教諭:井波祐二)