今こそ問う!社会に開かれた先生って?埼玉県高校:逸見 峻介教諭
コミュニティスクールや地域との連携で「開かれた学校づくり」や、
キャリア教育の普及などで、学校への外部支援などが一般化してきました。
私も教員として働く中で、学校と連携を取りたい企業や個人などが増えていると感じます。
また「もっと教員は社会に開かれるべきだ」という声を耳にします。
私も「教育はみんなで行うもの」と考え、
「学校だけで埋没する先生にならないようにしなくては!」と外とのつながりを深め、連携を模索してきました。
現場で様々な先生と一緒に働きながら、学校外で教育に関心のある人と話をする中で、
「社会に開かれた先生」というのは、かなり多義語であり、
人によってイメージが異なると感じました。
「社会に開かれている」とは一体なんでしょう?
どのような先生が「社会に開かれている」のかを30項目に分けたので、
そう思うものをチェックしてみてください。
■あなたの言う「社会に開かれた先生」とは、どれを指しますか?(もし良ければ、チェックしてみてください!)
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前半15人
⬜︎ 1:民間企業で務めたことのある先生
⬜︎ 2:民間人校長でバリバリ学校を改革している先生
⬜︎ 3:非常勤で働きつつ、別の仕事や休暇を楽しむ先生
⬜︎ 4:学校以外に、一般の方向けに学びの場やイベント、個展などを作っている先生
⬜︎ 5:企業や公的機関、NPOなどとコラボしたアクティブラーニング型授業や講演会を企画する先生
⬜︎ 6:NPOやプロジェクトを一般の方や大学の先生、他業種と立ち上げて社会問題を発信する先生
⬜︎ 7:子どもたちを引率して、学びの場に一緒に行く先生
⬜︎ 8:オンラインツールを使って外部連携をする先生
⬜︎ 9:様々な職業の人にインタビューして動画にまとめ、キャリア教育をする先生
⬜︎ 10:部活の顧問をしながら、一般向けの大会の審判や、パラスポーツとの連携などにも関わっている先生
⬜︎ 11:民間企業の研修講師として副業申請(もしくはボランティア)を行って活動している先生
⬜︎ 12:大人向けの講座(各教科など)を開いている先生
⬜︎ 13:違う校種やビジネスマン向けの講座などに参加する先生
⬜︎ 14:お金を払って都内の研修に参加する地方の先生
⬜︎ 15:授業を見てもらったり、SNSに板書や教材をアップして、そのフィードバックから学ぶ先生
さて、ここまで何人が社会に開いている!と感じましたか?
続いて後半15人です。
⬜︎ 16:部活動の顧問として、様々な都道府県や地域の専門委員会議に参加して幅広く意見交換をしている先生
⬜︎ 17:部活の練習試合で、他校の選手にも積極的にアドバイスをしたり声をかけてくれ応援してくれる先生
⬜︎ 18:自身の経験のない部の顧問だが、その内容を生徒に教わりながら、またスクールなどで自身が学びながら部活の指導に活かす先生。
⬜︎ 19:生徒のために知らない学校へ練習試合をお願いし、菓子折りをもって行ったり、部活用の名刺を持ってつながりを作ろうとする先生
⬜︎ 20:卒業生を送る会や修学旅行で披露するために、三線を練習したり、教員バンドを組んだり、恋ダンス・USAなど流行りのダンスにチャレンジする先生
⬜︎ 21 :美術や国語など他教科とコラボしたり、教材研究のため、各地の博物館をたくさん回ってパンフレットなどを廊下に掲示したりする社会科の先生
⬜︎ 22:大学や短大・専門学校、就職など生徒の進路のために面接練習を行ったり、企業からの話や学校への訪問者から話を聞いて、先生方へ共有してくれる先生
⬜︎ 23:入学案内配布のため、近隣の中学校などに挨拶に行ったり、保護者説明会のため、レイアウトやコンテンツを考えたり、登壇して話をしたり、実際に保護者対応をする先生
⬜︎ 24:最新のビジネス書など話題の本を学級文庫に置く先生
⬜︎ 25:子どもたちとの話の共通点を増やすために一週間のドラマを全て録画して見る先生
⬜︎ 26:様々な学力層、地域の学校を経験して、様々な先生や子どもたち、保護者と関わってきたベテランの先生
⬜︎ 27:ベテランから若手まで、分け隔てなく飲み会などに「一緒にどう?」と声をかけ、一緒に楽しむ先生
⬜︎ 28:地域のお祭りの当番などへ、自分の子供と積極的に参加している先生
⬜︎ 29:自分の住んでいるマンションの入り口を自主的に掃除する先生
⬜︎ 30:生徒に「わからないから教えて!」と言う先生
どこに開かれたというポイントがあるんだろうか
さて、どうでしょうか?「社会に開かれた先生」という時に、あなたの言う「社会に開かれた状態」というのは、一体どれでしょうか。
おそらく前半の15人が世間一般で言われている「社会に開かれた先生」だと思う方が多いのではないでしょうか。上記の活動は目を引くものであり、メディアなどでも広く取り上げられることがあると思います。私も様々なチャレンジをしている素晴らしい先生方だと思います。
後半15人はおそらくあまりメディアなどに取り上げられることはないでしょう。目を引く活動ではないかもしれません。でもそこには他者を思いやる気持ちがあり、新しい繋がりを作ろうと奮闘している姿があります。こちらも素晴らしい先生方だと思います。
さて、そもそも「社会に開く」とはなんでしょうか?「社会」とは何を指すのでしょうか?
学校の先生には、それぞれ独自の「社会への開き方」があります。それは人それぞれです。さらに、社会に開いたとしてもそれをSNSなどで発信するかどうかは、その人の自由です。発信したくないと思う人も多いでしょう。(これは民間企業などでも、一緒だと思います。)
ここまで話を進めてきましたが、昨今の先生を取り巻く環境で、変わらなければいけないことは非常に多いです。今後、外部の力が必要なことは多くなっていくことでしょう。しかし、制度面での改善はもちろんですが、【理解の面】でも働きやすい環境ができていったらいいなと思います。
最後になりますが、【先ほどの30人の例は、全て実在する先生方の話です。】そして、私も尊敬しているステキな先生方です。「社会に開かれている」先生かどうかは人によって違うでしょうが、子どもたちのために努力している人だと私は思います。立場を超えて何かにチャレンジしたり、コミュニケーションを大事にしたり、身近な人を大切にしている先生です。誰かが言う「社会に開いている先生」に当てはまらなくても、上記の先生方は今日も明日もそれぞれの力をそれぞれのフィールドで発揮していることでしょう。
逸見 峻介(へんみ しゅんすけ)
1988年 埼玉県秩父市生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科を修了した後、埼玉県の公立高校教員(地理歴史)へ。
場づくりとコミュニケーションの専門家育成プログラムである青山学院大学ワークショップデザイナー育成講座修了生(27期)。「人間っていいな!面白いな!」と思える人を増やすことを目指し、日々必死に生きている。教育を中心とした場づくりに関心があり、学校の中と外で活動するパラレルワーカーとしてチャレンジを重ねている。勤務校では「生徒が主催者となる放課後セミナー」の企画運営を担当、学校外では高校生・大学生・大人(教員・民間企業・NPO)などとコラボして一緒に場づくりを行っている。「教育×パラレルキャリア」・「大人の歴史講座」ページ主催。