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連載企画「未来の先生インタビュー」:「人間っていいな、面白いな」と思える人を増やしたい逸見先生の取り組みと想い

今回は埼玉県で高校社会科教員をされている逸見峻介先生にインタビューをさせていただいた。逸見先生は、生徒が主催となるイベントや授業を行ったり、個人や共同でワークショップを開催したりしている。そのため、今回は逸見先生が教員を志した経緯や普段の仕事内容、ワークショップに関することなどについて取材を行った。

教員を目指したきっかけについて

―逸見先生は他のインタビューで教員を目指した理由として、『チームビルディングやキャリア教育、歴史教育にもともと興味があった』とお答えになっておりましたが、これらのことにいつ興味を持ちましたか。また、きっかけはどのようなものでしたか。

逸見先生 前提として、私は教員に恵まれていた環境の中にいたと思います。学校で教わっていた先生も良い先生が比較的多かったです。また両親はともに中学校教員をしていました。忙しくもあったと思いますが、基本的に楽しそうに仕事をしていた印象がありました。このような環境で育ったため、教員に対して比較的良いイメージを持っていた気がします。私は高校の教員になることを選びましたが、直接的なきっかけは高校時代に遡ります。高校生の時の私は、とても生意気でした笑。当時の高校の歴史の授業が、正直つまらなかったんです。そんな授業を見ていて、「自分の方がうまく教えられる!もっと生徒を巻き込んで、歴史の面白さを伝えることができる!」と当時の私は思っていました。歴史はそもそも好きな教科だったので、歴史の教員も悪くないかな、と考えるようになりました。ちなみに、後々自分が教員になると、実際に授業を行う難しさを知ることになり、自分が生意気だったことに気づきます笑。

―チームビルディングやキャリア教育に興味を持ったきっかけについてはいかがですか。

逸見先生 最近はアクティブラーニングという言葉が流行っていますが、私も高校生の時に生徒との対話やグループワークなど一緒に授業をすることが大事だと思っていました。ただ一方的につまらない話を聞かせて分かった気にさせようとするのは、やはり良くないと感じていました。

 私は学校の教員になることは決めていましたが、教育は学校の枠組みだけではなく、社会全体に関係があると考えています。そのため、私は違う視点で教育を見たいと考えて、NPOや教育イベントなどに参加するようになりました。その中でワークショップやチームビルディングに出会いました。この分野はとても面白かったので、自分にとって間違いなくプラスになると思い、学ぶようになりました。

教員1年目の様子について

―そうだったんですね。次の質問では、教員になって1年目の仕事や役割の話とそれを通じて何を感じたのかについてお聞きしてもよろしいでしょうか。

逸見先生 私は、最初に埼玉県立蕨高等学校に赴任しました。教員1年目は、日本史と世界史の授業を担当しました。世界史は教えたことがなかったので、とても大変だったことを今でもよく覚えています。部活動は、硬式テニス部の顧問になりました。また教務部の一員として、時間割や成績処理などの学校全般に関わる業務を行いました。授業は教育実習などでやっていましたが、校内の仕事はほとんど分からなかったので、最初はサブとして手伝うような形で仕事をしていました。また、学年の仕事では会計業務や、行事の運営などを担当しました。私は、教員経験がなかったので、先輩たちに多くの場面で助けてもらいました。とても良い職場だったので、この学校からスタートできてとても良かったと思います。

授業の形態について

―様々な仕事に取り組まれていたんですね。それでは、次の質問に移ります。逸見先生は、生徒主催のイベントやワークショップなどをされていますが、普段の授業の形態について、生徒にどのように学んでもらうようにしていますか。

逸見先生 授業については、試行錯誤の繰り返しです。前任校はかなりの進学校だったので、大学入試に軸足を置いた授業を基本としていました。授業では、ティーチングばかりにならないように、グループワークをメインに展開したこともありましたが、私の力不足もあり、生徒にあまりフィットしませんでした。それから改善を重ねて、バランスを取って授業を構成していました。グループワークや『学び合い』、ゲストに僧侶を呼んでの外部連携などもさせてもらいました。進学のことも考えつつも、いろいろなことにチャレンジをさせてもらいました。

 現在勤めている学校は、進路多様校です。大学・専門・短大への進学もいれば、就職する生徒も多くいます。進路でも面接試験や小論文など、人物像が問われる入試も多いので、生徒には将来も見据えて、主体的に取り組んでほしいという思いがありました。そこで、授業を生徒に任せることにしました。現在、私は世界史を担当していますが、「授業をジャックしろ!」というテーマで「授業ジャック型世界史(JJS)」と名付けて授業を行っています笑。この授業形式は、ワークショップデザイナー仲間でもある社会科教員の武居秀俊さんの実践を参考にさせてもらっています。

 具体的に説明をすると、4月はチームビルディング的なワークショップを行い、関係づくりを進めます。その後は、グループを作り、教科書の担当箇所を分担して、生徒たちにどこを授業するのか決めてもらいます。3~4時間ほど教材研究の時間を取り、発表して振り返るという流れです。生徒はどうかというと、これがとても面白いんですよね。発表方法はA3の紙を使用して「紙芝居プレゼンテーション(KP法)」を基本としていました次第に、Googleスライドを使いたい!という生徒も増えて発表の幅も広がってきました。最初は発表を嫌がっている生徒もいましたが、周囲からのフィードバックなどを経て、次第にコツを理解して楽しさを知り、成長してきています。世界史上の出来事を今の日本や身近なものと関連付けたり、漫画風にするなど、面白いものが増えてきました。

 印象に残ったエピソードを1つ紹介させてもらいます。授業で宇宙の誕生、いわゆるビックバンの範囲を担当するグループの1人が、YouTubeの関連動画を見つけてくることがありました。その生徒は私に対して「全員に流したい」と授業の前に言ってきました。4月頃はどこもGoogleスライドを使っていなかったので、「動画を流す場合は、前日に申し出がない場合はこちらも準備が間に合わないからできない」と伝えていました。その旨を改めて伝えると、その生徒はどうしても見せたい様子だったので、「それならば、クラスLINEグループで流してみたら?」と伝えました。しかし、年度が始まって間もない時期だったので、そのクラスではLINEグループができていないようでした。その生徒は、どうにかして見せるために各グループの1人とLINEを交換してくると言い、授業中に「LINE交換して」とお願いして回り、動画を共有してYouTubeの映像を見せることに成功しました。これがきっかけとなり、友達も増えたらしく、自分なりに工夫することで、目的を達成することができたようです笑。小さいかもしれませんが、自分で苦労して見つけたからこその成果だと私は思っています。今回のこの事例は、生徒たちを信じて任せることで見ることができた景色だなと感じました。まだまだ試行錯誤中ですが、とても楽しく授業をさせてもらっています。

僧侶の鈴木秀彰さんとコラボした日本史の授業

―生徒自身の活動がとても多い授業形態をとられているんですね。そのような授業で生徒にアドバイスをする際に注意していることはありますか。

逸見先生 ルールは幾つかあります。主なルールは①全員が何かしらに関わること、②自分たちに関連づけること、③問いかけを1つ入れてクラス全員を巻き込むことです。これは生徒たちに民主主義の精神や協調性・コミュニケーション力を育むことを目的にしています。必要に応じてグループワークに介入することもありますが、学びのコントローラーを生徒に委ねることを忘れずに、一緒に進めています。

ワークショップについて

―では、次にワークショップについて伺いますね。ワークショップについて個人や共同で開催していますが、ワークショップの内容を決める時の基準は何かありますか。

逸見先生 ワークショップを開く際の基準で大事にしているのは、「誰とやるか」です。「この人は本当に素晴らしい!」と心の底から思った人とイベントを開くことが多いです。本業の隙間時間でイベントを企画しているので、本当にやりたい人としかやりません。一緒にイベントを企画することで、ゲストのことをもっと知ることができますし、新たなネットワークも広がっていきます。とても学ぶことが多いですね。また職業柄、若い世代のチャレンジを支援しているので、高校生や学生などとイベントを開くことも多くあります。

勤務校生徒を引率して参加した「近未来ハイスクール」のワークショップ

―そのようなワークショップ中の注意していることとかはありますか。

逸見先生 ワークショップにおいて、注意していることは正直、死ぬほどあります笑。多すぎるので、うまく言語化できませんが、強いて言うなら「自分だけが主役ではない」という視点です。自分が企画したイベントではありますが、皆さんの時間を割いているので、自分のためだけにならないように意識しています。やはりお声がけしたゲストや参加者の学びを最大化することが大事だと考えています。それ以外の設計のポイントであれば、①内容の面白さ、②主催者側のあり方、③参加者間の関係づくり、④活動環境やツールの充実度など、4つのバランスをとって企画をするようにしています。どの視点も重要なので、それぞれを充実させることが重要と考えています。

今後行っていきたいこと

―では、最後の質問ですが、逸見先生は「人間っていいな、面白いな」と思える人を増やしたいという考えを持ち、ワークショップや授業の形態を考えていることがよく伝わってきたのですが、今後やっていきたいことは何ですか。

逸見先生 現在勤務校も変わったばかりなので、まずは職場で多くのことを学びたいと思っています。熱心な教員も多く、生徒たちも頑張っているので、とても良い職場だと思います。また、高校生の就職支援に関わることが増えてきたので、その分野について学びたいと考えています。キャリア教育はずっと関心のあるトピックなので、幅広く学びたいですし、自分でも学びの場づくりを進めたいと思います。

―以上でインタビューを終えたいと思います。本日は本当にありがとうございました。

〜編集後記〜

 今回のインタビューを通して、自分が今まで思っていた授業やワークショップについて違う視点で大切なことを気付かせてもらうことができました。例えば、ワークショップについては、後々大学の同学年でワークショップやイベントなどの企画を考えて運営をしていく予定があり、何をしていくかをぼんやりと考えていました。その中で、どのような内容をしていくか、材料などはということをメインに考えていました。しかし、今回逸見先生の話を聞いて、参加者のことを考えるということや、企画を運営している自分たちは参加者を立てる役割をしていくということの大切さを知ることができました。授業に関しても同様で、受けている人を意識して自分は活動して、より受けている人にとって良いものになるように考えるということを大切にしようと思うことができました。

(Unportalism Education 編集部 太田雅)

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