高校教員になって気づいたこと〜まちに教え子がいっぱい〜
3月下旬。
今年度も終わりを迎え、来年度の準備が始まるこの時期にいつも思います。
「教え子たちが、社会に出ていくんだなぁ。」
私は高校教員になって、自分が関わった生徒が社会に出ていくことの嬉しさと楽しさを知りました。
★まちに教え子がいっぱい
オフの日にブラブラしていると、教え子に遭遇することが多い。
高校教員を続けていると、こういったことがよく起こります。
教員をしている間は毎年卒業生を送り出します。
つまり、自分のことを知っている人間が毎年社会に飛び出していくのです。
「このまま教員をしていると、自分を知っている子たちはどのくらい増えていくんだろう。」
すごく気になったので、ちょっと考えてみました。
例えば、教員10年間で3校の中規模校を経験したA先生。
(中規模校の生徒は600名とする)
A先生が関わってきた生徒数は以下のようになります。
1年目 600 人(1校目)
2年目 800 人(新入生+200)
3年目 1000人(新入生+200)
4年目 1200人(新入生+200)
5年目 1800人(2校目)
6年目 2000人(新入生+200)
7年目 2200人(新入生+200)
8年目 2400人(新入生+200)
9年目 3000人(3校目)
10年目 3200人(新入生+200)
グラフにすると以下のようになります。
コツコツとしっかりと増えていきますね。
A先生の場合、10年目で3200人!!
自分を知っている子たちが増え続けるイメージはわかりました。
ここで、私は気づいたことがあります。
教員は学校にいる生徒を全員しっかり知っているわけではない。
高校では教科によって教員が変わります。
よって、授業を受け持つことがないまま卒業していく生徒がいます。
つまり、所属する学校の生徒全員を認識しているわけではありません。
しかし、生徒は違います。
先生の数はそれほど多くないので、その先生の授業を受けていなくても自分のことを先生として認識しています。
私が生徒を知らなくても、生徒は私を知っているのです!
★突然声をかけてくる教え子たち
「あー先生だ!私のこと覚えてますかっ!?」
オフの日。
まちをブラブラしていると、このように突然卒業生に声をかけられた経験があります。
何年も前の教え子でパッと名前が出てこない子、卒業してから雰囲気が変わってすぐにわからない子などから声をかけられると、かなりビックリします。
「・・・(あれ、この子の名前なんだっけ?)」
そんな雰囲気を出すと「あー覚えてないですね。」とバレて、ちゃんと名前を教えてくれます。
このとき「生徒の名前はしっかり覚えておこう!」と心に誓います。
しかし、何度誓っても同じ過ちを犯してしまうのが今の最大の悩みです。
★教え子の優しさで救われる
昨年は4年前の卒業生Bさんと偶然の出会いがありました。
私は出勤する前に利用するカフェがあります。
ほぼ毎日通っているのでいつしか店員の方に覚えていただき、オーダーしながら他愛のない会話ができるようになりました。
ある日、オーダーを聞いてくれた店員さんと会話している中で、私が教員をやっていることを伝えました。
すると隣からすごい勢いで会話に割り込んでくる店員がいました。
「やっぱり先生だ!ずっと似てると思ったんです!私のことわかりますか!?」
そう言われて顔を見ると、Bさんだとわかりました。
これまでBさんに何度も接客してもらっているのに、言われないと気づけないくらいかなり大人になっていました。
そんな偶然の再会を果たてからは、私がそのカフェに立ち寄るとBさんは大学の話や就活で困っていることを話してくれます。
そんな何気ない話をしてくれることが、なぜか私はすごく嬉しく感じます。
先日もカフェに行くとBさんがいました。
「先生、コロナの影響で一斉休校なのに学校行ってるんですか?」
こう質問されたので、休校でも先生たちは出勤して仕事をしていることを伝えました。
すると、Bさんはコーヒーを渡しながら「頑張ってください。」と言ってくれました。
手渡されたコーヒーのスリーブにはメッセージが書いてありました。
嬉しい。
ただただ嬉しい。
オフの日でも教え子に声をかけられる可能性が高い教員。
まちに教え子がいっぱい存在する状態は、もしかしたらストレスなのかもしれません。
しかし、私が体験したようなものすごく嬉しくて元気になれることもたくさんあります。
教員をやっている楽しさって、こういうことなのかもしれない。
いまはこんなことを考えています。
(都立高校教諭:島村学)