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修学旅行が3回ナシになっても代替修学旅行で本気の笑顔へ!「本気でやらなきゃ本気で笑えない」~子ども達が自ら楽しみ幸せになる大人になるために~

コロナだからと簡単に諦めない!

どうしたら修学旅行が実現できるのか。何度も延期になった中、どんな形なら実現できるのか。大人が本気で考えた。

どうしても実現させたかった。

諦めたくなかった。けれどやっていいのかもめちゃくちゃ悩んだ。

3月に修学旅行代替行事を3つも行った坂戸市立入西小学校山下先生の熱い思いを伺った。


なぜ、3月に修学旅行代替行事を3つも行うのか

コロナ禍で3年連続同じ学年の主任として6年生を担任することになった。

年度当初に、学年担任でワークショップを行い、学年目標を『自分らしいリーダーとして「自ら考え行動する子」「自分も相手も大切にする子」「本気で挑戦する子」みんな笑顔で卒業』とした。

本来であれば6月に日光へ一泊二日の修学旅行へ行くはずだった。

しかし、コロナの影響で11月へ延期となった。

11月に実施の一週間前に突然市から自粛要請がくる。市内で感染が広がったためだ。行動班や部屋班やバスレクなども決まって、しおりが完成した直後のことだった。

管理職も担任も嘆いたが、何より体育館で校長から説明を受けた子供たちが一番悲しんでいたと思う。泣いている子もいた。

しかし、子供たちは2月に延期されることを知り、前を向き進んでいった。

うちのクラスでは、バスで隣に座るはずだった友達と校庭をペアウォークでおしゃべりをしたり、教室でバスレクでするはずだったビンゴゲームをした。また、学校近くの公園まで散歩をして遊んで帰った。下を向くことなく楽しそうに遊んでいた姿に私が救われた気がする。

修学旅行が2月に変更されたことで、本来行くはずだった日光のホテルには断られてしまい、場所が神奈川県の大磯方面に変わった。

担任の下見はなんと12月29日の年の瀬となった。そして、年末年始は大磯方面の修学旅行の行程表作りと保護者用説明資料の作成に明け暮れた。(例年、体育館で行っている説明会は、6年生のサイトを立ち上げて、そこにPDFを張り付け見てもらい、質問はGoogleフォームでとりまとめた)

また、日光に行かせたい思いもあり、本来1月の社会科見学で国会議事堂に行くはずだった予定を日光へ変更した。

日帰りの日光ではあったが、ほぼ貸し切りの日光東照宮でガイドさんの話を真剣な眼差しで聴く子供たちの姿や行動班で協力して2社1寺を回る楽しそうな姿、そして何よりお土産屋さんで買い物をしている幸せそうな顔を見て隣のクラスの担任と泣きそうになった。

あきらめずに日光へ行けてよかったと子供たちの感想からも感じた。ただ、数名コロナが心配で参加に同意できない家庭があったのも気がかりであった。

2月の修学旅行実施に向けてまた1つ大きな問題があった。緊急事態宣言だ。我々は修学旅行という子供たちにとってかけがえのない学校行事は不要不急の外出に当たらないと考えた。また、感染症対策もしっかり行えていたし、保護者からも9割以上の賛同を得ていた。しかし、市からは延長の場合は、泊を伴う修学旅行は自粛との要請がきた。

今度は子供たちには中止を伝えなければいけない。

子供たちの中には大人を信じることができない子さえいたと思う。また中止?何で私たちだけ行けないと怒った子もいたと思う。

逆に、ここまで先生たちが準備してくれたから仕方ない。ありがとうございますと気持を書いてくれた子もいた。

学校行事として中止ですと決めるのはとても簡単だ。現に、多くの学校で修学旅行を日帰りに変更し、社会科見学は中止などと決めている学校も多いと思う。

それが、別に悪いということではなく、私は一泊二日の修学旅行で得られるはずだった経験を何とか子供たちに別のものでもよいから与えたいという思いが強かった。

普段あきらめずに最後まで挑戦しようと言っている大人が、コロナという環境のせいにして簡単に諦める姿を子供たちに見せたくないというのもあった。

そこで、もともと考えていたVR修学旅行と子供たちから出ていた校内イベントと日帰り卒業旅行を組合せられないかと思い、管理職や学年の先生方へ提案した。

①修学旅行1日目の代替案

→修学旅行で本来1日目に行くはずだったさがみ湖プレジャーフォレストへの日帰り卒業旅行

②修学旅行1日目夜の代替案

→校内イベントとして放課後に買い物をして学校で夕食をとり、夜の学校(校舎や校庭)でレク(ナイトウォークや花火)を行う。

※児童から実行委員を募集

③2日目の代替案

→入西フェスティバル~文化と地球を旅する修学旅行~

井上創太さんに企画依頼で実現した入西フェスティバル。落語、eスポーツ、ドローン大会、プロジェクションマッピング、人気プロデューサーによる「自分てどこにある?」、VR修学旅行(エジプト)と盛り沢山。


児童の入西フェスティバルの感想

そして、管理職と学年の賛同を経て、2月の保護者懇談会前日に子供たちへ伝えた。

翌日の保護者懇談会では内容について保護者同士で語る場を設けた。

それぞれに正しさはある。その正しさに対して否定はしない。ただ、私は、自分の正しさをブレずにここまでやってきたと思う。

それは、年度当初に掲げた学年目標を達成させること。数値では表すことができない学校教育として大事な力である。

そして、小学校生活最後に最高の思い出を創り上げる活動として、主体的に取り組むことを通して、自己の生き方を見つめ考えを深めていってほしい。

私は子供たちを卒業させることが目的だとは思っていない。

社会に出たときに自分の力で幸せになる子に育ってほしいと思っている。

これは、今の私にできる子供たちへの授業の1つであるとも言える。

この企画は、私一人では到底実現できなかった。

最後まで支えてくれた同僚、一緒にあきらめずに後押ししてくれた管理職、ご理解ご協力をいただいた保護者、一緒に企画を考えてくれた民間の方々。

公立の学校とはまさに地域のハブとなる存在だ。

学校だったら不可能も可能にしてくれるわくわくする場。

私はこれからも公立学校と社会をつなぐ架け橋になりたい。


この山下先生の取り組みは3/12に日本テレビのnews zeroでも取り上げられた。

https://www.news24.jp/articles/2021/03/13/07838702.html?fbclid=IwAR0d247S4S1PxvCJ89tXX3goVOuXJ3IiwNOa-P1LfvVYg2koG2c7TKriNvE

インタビューを受ける山下先生。

全国の色んな学校で昨年から続くコロナ禍で通常の行事ができずに苦悩してる大人、子どもがたくさんいる。

時には諦めや我慢も必要だろう。でもそれでは終わらせることができないこともある。山下先生のアクションは一つの答えなんだろうか?

「本当の答えは、ちゃんと修学旅行に行けることなんですよね。だから、そもそも今回のことが良かったのかどうかは議論の分かれるところだとも思います。教育の現場はどうしても様々なファクターを考えて縮こまり気味になりやすい。だからこそこんな形でも子供たちに何かを伝えることができたらと。これからも何が起こるか我々の想像を超えることが教育の現場にもたくさん出てくると思います。そんな時に正解だけを求めないで目の前にいる子供たちと向き合って行けたらいいなと。今回、保護者の皆さんの理解や学校の先生方の協力なしには実現できなかったですが、とにかく子供たちが自分たちで考えて進めた最終日。子供たちの取り組んでいるイキイキとした眼差しは忘れられないと思います。」

山下先生のブレない気持ちがきっとたくさんの人の心を揺さぶったに違いない。そして、そんな山下先生の姿を一番近くで見ていた入西小学校の6年生のみんなは、自ら楽しみ幸せになる大人になっていくだろう。

(編集:unportalism education編集部)

山下揺介(埼玉県坂戸市立入西小学校)

1984年埼玉県坂戸市生まれ。 県立川越高校→東京学芸大学教育学部障害児教育学科 大学休学中にオーストラリアの特別支援学校においてJapanese dayを企画。 卒業後、埼玉県小学校教員として勤務。 特別活動、体育、キャリア教育を中心に活動。 現在は、1000人を超える学校の学年主任として、各教科単元に企業や地域などの人材が関わることで『公立学校と社会がつながる授業』を実践中。 教師同士がつながり自己実現できる場『みんなの職員室』発起人。

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