困った時に頼ることができるマインドセット【大野先生のひとりごと】
Facebookで、ある先生がこんな発信をしていました。
“私、高校社会科の教員なんですが、正直ウクライナの話、あんまりわかっていないんですよね。なので、勉強をしたいなと。
そこで「ウクライナ・ロシアについて、話してみる会」を需要があれば、開いてみようかなと思っているのですが、興味のある方いますか?“
この発信、素晴らしいと思いました。
もしこのような思いを持ったとしても、教員としての「プライド」が邪魔をしてしまうと思います。
でも、こんなにすんなりと「わからないから勉強したい」と発信できてしまう。
これって、「困った時には周囲に頼れば何とかなる」というマインドセットががっちりしているからなのだと思います。
そして、このことは、僕自身が教育活動の中でもかなり大切にしていることと重なります。
この発信によって、多くのコメントが書き込まれていました。
そこには、学ぶための素材がたくさん紹介されていました。
これは、「こういう風に学びを切り開いてほしいなぁ」と思う姿そのものです。
最近、「探究学習で目指すものは何か」ということを考えています。
その一つの大きな要素が「困った時には周囲に頼れば何とかなる」という感覚を持てるようになることだと感じています。
アドラー心理学の「共同体感覚」にも似たようなことがあったなぁと、小倉 広さんの『アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉』を見直してみました。
一部引用します。
“「共同体感覚」はアドラー心理学の中核とも言える考え方です。「アドラー心理学の実践上の目標は、『共同体感覚』の育成であり共同体感覚』が発展されればすべての困難から解放される」とアドラーは言っています。そして、その「共同体感覚」は、以下の3つにより構成されています。①周囲の人は私を援助してくれる=他者信頼②私は周囲の人へ貢献できる=自己信頼③(その結果として)私は共同体に居場所がある=所属感、の3つです。“
ここで述べられている「共同体感覚」の①と近いと感じます。
また、それを基盤として②の自己効力感が感じられれば、③の居場所による安心感につながっていくのだと思います。
人生を切り開いていく上では、「困った時には周囲に頼れば何とかなる」という感覚が本当に大事だなぁと、実例から学ぶことができました。
学校教育の場において「プライドが邪魔する」ような経験は、逆のマインドセットを強化することになりかねません。
授業で、「恥とプライドを捨てること」を大切にしてほしいと伝えていますが、その価値はこういうところにあるのだとあらためて感じました。
大野智久 :1980年茨城県取手市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。大学では松田良一氏に師事。 都立高校教員として13年間勤務し、2019年4月より三田国際学園に勤務。 生物教育に関して、東京都生物教育研究会を中心に活動し、東京都日本生物教育学会、日本生物教育会にも所属。 「学習者中心の授業」の普及のために、個人のウェブサイトで教材等を公開したり、研修会で講師を務めたりするなどの活動も行う。 また、オプンラボによる、社会人と中高生をつなぐ「近未来ハイスクール」にもアドバイザリーボードとして参加するなど、「出る杭を育てる」活動を行なっている。